なみだ明かり
Music | haiena
Directer/Camera | N/inco
Cast | Suzu
ー夏色インコ
以前のインタビューで haienaさんの作曲歴は十数年とお伺いしてますが、
この曲作ったのはいつぐらいの時期?
ーhaiena
この曲について手前は何も知りません。こんなに下手くそなのを僕が拵えるはずがねえんだ。
『はちみつバード』の熱心な読者さんであれば、アタクシの曲もどきを幾つか聴いたことがある、
そういう方も少なからずいらっしゃいますよね?(聴いたことねえよとは言わないで下さいませ)
故、「声が似てるじゃねえか」と思われるやもしれませんが、まあ、そこんところは
ともかくとしてですね……畢竟、僕の曲じゃないと言い張っていると、おハナシが進まねえし、
ややこしくなりますので、僕が作った、僕が歌った、という体でおハナシ致します。
それでどうでがんしょ?よござんすね?この曲が出来たのはおそらく16年前くらいかしら、はい。
ー夏色インコ
えーと、要はhaienaさんが拵えたんですね? 先に進めます(笑)
今回、はちみつバードの趣旨に則って“あの頃の僕は“というテーマでこの素敵な曲を
企画用にと提供していただきました。初めて聴かせていただいたとき、かなりグッと来た、というか
ロマンチックな詩とメロディーに持ってかれちゃったというか。
なんでこの路線、やめちゃったんですか?
ーhaiena
褒めてもらっちまってあれなんですが、よくよく聴いてみてくださいまし。
ひかり~だとか、なみだ~だとかか、無用に繰り返しているだけざんす。
もとより手前は詩を書くのが大嫌いでね。ロマンチックな神経がない。てめえに酔えない。
格好つけた比喩を持ってこられるとげんなりする。加えて他所様にお伝えしたいこともない。
つまりは、ものを書くというところにおいて、野暮天、これに尽きます。
こうした歌謡曲ロックもどきの演奏や制作をやめちまったのは、バンドを組めなくなったからです。
(もはや誰も僕と組んでくれなくなったという方が正直でしょうかね……嗚呼)
何よりも……この手の歌謡曲ロックもどきってダサいんだ……
ダサいという自覚があっても売れてりゃ我慢もやれますが、人気なし、メンバー同士の仲も最悪、
てめえの拵えた音楽にうんざり……これじゃ続けられねえわな。
そして僕の十代の頃の思い出が、バンドを続けるということにずっと躊躇いを思わせていたというのがございます。
週三で合コンをしていた僕ですが(以前のはちみつバードの記事をお読み下さい)
ギターを弾ける、バンドをやってる、こうしたハナシをした途端、きまって「ダッセえ……」と
女の子らに嗤われ蔑まれたもんです。音楽やってる、即ちDJという時代でした。
時代というと大袈裟になりますが、少なくとも、東京の山の手で遊んでる僕の周りの女の子達は
そんな感じだったのよ。
故、バンドをやるってことに対して、 彼女達の嘲笑をいつまでも引きずっているような
妙な気分がありましてね。いやあ、思春期の悪い思い出って怖いよねw
ー夏色インコ
えーと、要約すると高校時代にバンドなんてダサい、と女の子たちに嘲笑されたのがトラウマになっていて、
いまもそれを引きずっていると…泣けますね(笑)
個人的にギター弾けるひとは、無条件に素敵だと思うけどなぁ。
この曲を作って歌っていたころのhaienaさんの青春奮闘記みたいなのがちょっと切なくて、
俄然興味が湧いて来ます。そして、インコとしてはやっぱり歌詞に言及したい。
短いフレーズの繰り返しなのに、しっかりと心をつかんで来るといいますかね。
バンドと歌詞作りに関して、当時の奮闘記を少しお聞かせ願えれば、と
ーhaiena
奮闘も何もありませんです。すいません。
あの頃のバンド活動は、みっともねえ虚しいばかりのモラトリアムという他ない。
ただただ後悔を……そんなハナシはどうでもいいとして、この音源については
手前一人で拵えました。つまりは宅録ね。ドラムは生ドラムをサンプリングして、適当に済ませました。
とにもかくにも、ギターやベースを一曲通しで弾くってのがしんどかったです、はい。
楽器をやる方にしたら普通の作業やもしれませんが、僕には面倒で仕方なかったし、
指もすぐに疲れちゃってね。うんざりしながら弾いて録って弾いて録って……
そんで仕上がりもまた宜しくなくてね。haha……
歌詞は思いつきでしてね。聞こえの良い言葉を並べて繋いだだけざんす。ごめんなさいね。
こ、こんな冴えない美化なしのハナシになっちまって……
ー夏色インコ
ところで haienaさんは、以前はちみつバードで『王道青春ラブコメ映画と僕の放課後』という
映画レビューのようなものを書いてくださいました。
それによると、小学生の頃からたくさんの映画を観ていらっしゃったそうですが、
音楽に関して映画の影響も受けているのかしら、やはり?
ーhaiena
映画の影響……う、うーん。映画音楽は大好きなんですけども、
現在のトラックメイクを含めた音楽活動めいたもんには、(トラックメイクだってよお!)
その反映といいますかね、そういうのはあんまりないかなw
ー夏色インコ
で、歌謡曲ロックもどきというものをお辞めになって今は
エレクトロニックミュージックをやっていらっしゃるのだけれども、
そこへ移行したのに何か特別な理由とかあれば教えてください。
曲の作り方もバンド時代とは違うのでしょうか。素人っぽい質問でゴメンなさい。
ーhaiena
ギターやベースを弾くのが嫌になっちゃったというのもあるんですけども
(いつも同じようなアレンジになっちゃうもんだから……)
近頃はオルタナティブ(?)とエレクトロニックミュージックの区別が曖昧になってきたといいますか、
本当に知らぬ間に海外で新しい音楽のムーブメントが起きたりなんだりでしてね、
レトロウェーブだとかね……(知ったかぶりやがって……)
畢竟、手前自身の演奏や曲作りの古臭さを思い知らされる機会がこれでもかと増えました。
数年前に初めて聴いたルクセンブルクのトラックメイカー『Sun Glitters』さんの
「High」っていう曲、これが決定的だったかしら。(決定的だったんですって!)
国内ではシューゲイザーチルだとかウィッチハウスだとかチルウェーブだとか、
そんなジャンルとして紹介されてたのかな? 僕が「High」を聴いた時点で
チルウェーブ等は下火のそれだったんですけども、
関わらず、すっかり憧れちゃってね……
そこらへんからガジェットシンセなんかをイジくるようになりました。
こうして音楽の経験を白紙に戻したといいますか、初心者に出戻りといいますか、
良し悪しは解らないけれども初心者って楽しいよ。
ー夏色インコ
初心者って楽しい(笑)いい言葉ですねー。
新しい音を追求していまのスタイルになったというわけですが、
それから割とすぐにコラージュ作家のジャン=ピエールさんとの出逢いがあったのかな?
ーhaiena
どんなに下手でもダサくても初心者だからと言い訳やれるってのがね……haha
相棒のジャンさんのことは宗旨替えする前に知り合っていました。
どうして彼の画が好きなったのか、また親しくなれたのか、
その成り行きについては上手に説明やれません。
ともかくとして滅法、気が合いますし、付き合うほど彼のことが好きになるというのかな、
本当に人物として面白い。優しくてド変人の天才肌で頼りになる、最高だろが、え?(笑)
何よりも彼の創作は素晴らしいです。
作風というもんは一応あるけれども、そこに留まらないといいますか、
どんどん変わっていく進歩していく奥行きがあってスゴイのよ……
皆は彼の画のことをシュールだとか何だとか評することが多いけれども、
彼の画はモンドでサイケなそれだと僕は思っています。
これを本人に話したら「そうかしら……」というような感じだったけれどもねw
どんなに忙しくなっても、暮らしの事情が変わっても、
彼との活動はずっと続けていきたいな。惚れてんだな……
ー夏色インコ
いいなあ。そんな気の合うパートナーと出会えること自体、とても素敵なことのような気がします。
2017年の終わりごろから、彼との共作でミュージック・ビデオを幾つか発表されてますね。
どちらから誘ったんですか?
ーhaiena
どういった経緯があって、 ジャンさんと共作みたいなもんを始めたのか、
これについてはたま~に訊かれるんですがね、たま~にね。本当に解んねえんです、はい。
普段からすっとぼけて嘘ばかりの僕なんですが、こればっかりは本当です。
おそらくはジャンさんも解らないんじゃないかしら。
こんな風におハナシすると、 芸術家同士が自然として惹かれ合って~だとか、
互いの才能が引力となって~だとかね…… そういうキザったらしい聞こえに
なっちまうやもしれませんが、
実際のところは、 同じ団地の友達同士で頭のおかしい暇つぶしをやり出した、
それくらいの程度というか様子といいますかね、ええ、はい。
ー夏色インコ
それから1年後、いよいよ『J&Hフィルムズ』が立ち上がるわけなんですけども、
名前からして映像を制作するユニットなんですよね?
そうなった成り行きみたいなのをお聞きしたいです。
ーhaiena
ジャンさんが新しいことをやりたがっていたので、
こちらから「映画でもやるかい」と誘ったのが始まりです。
映画というよりも 彼のコラージュ画と、こちらで用意した出鱈目で低俗な
物語もどきをくっ付けた何か、 そんなところでしょうかね。
『J&Hフィルムズ』という看板は、ジャンさんが適当に考えてくれたもんだと思います、はい。
僕も忘れていたけれど 『smoking dead』というのをですね、
二人の活動のそれとして勝手に名乗っていたこともあるんですが……
ウォーキングデッドのダジャレなんですけどね。
まあ、二人とも喫煙者なもんですから。ええ。だからなんなんだよっていうハナシざんすね。
ー夏色インコ
そうそう、haienaさんとジャンさんが面白そうなことを 始めたんだな、っていうのは
知っていたけど、まさかインコにもお声がかかるとは思っていなかったんです。
お2人の作品のレベルが 高すぎて、あの時点ではインコの理解が追いついてなかったし(笑)
これはリスペクトを込めて言ってます。わかるよね?
なのでここで、どうしてインコに白羽の矢が立ったのか、改めて 理由を聞いてみたいです。
まさか、性格的に扱いやすそうだったからとかそんな理由じゃないですよね…?なんか怖い…w
ーhaiena
ヒロイン役の画がどうしても必要になりまして、編集長を誘った、というよりも
巻き込んだっていう次第でしょうか。
以前、 編集長には僕のMV『some ofなんとか』で写真を撮りまくってもらったし、
また曲作りから編集まで、 さんざっぱら僕らを追い込んでくれました。haha
僕とジャンさんは仲が良すぎて、互いの作業に対して客観的になれないこともありますし、
作品(作品っていうのはなんだか偉そうでヤダな)の理想を目指して云々よりも、
その場その場で出来たものを使っていけばいいやというような 横着な様子も多分にある。
編集長にはそうした僕らの大雑把なところを締めてもらいたかったし、
(外側から創作の良否を判断やれる目利きの仲間が必要だったのよ)
実際としてインコさんが参加してくれたことで、今作においての僕のだらしなさは
幾分かマシになったしね。まあ、何よりインコさんの写真が格好良いからさ、
何ひとつとして心配することありませんでした。本心。
今作に参加している編集長、ドローイング担当のあすてかさん、
二人ともよくよく僕らに、いや、僕に我慢してくれていると思いますよ。
ー夏色インコ
なんだかありがたいお話ですね。インコの辛口が意外とお役に立っていたとは…
怖がられているとばかり思っていました(笑)
こちらから言わせていただくと、映像という未知だけどとても魅力的な世界を垣間見れる
機会を与えていただいたことが、いまでも奇跡のように思うし、実際にインコにとっては
突拍子のない大事件でしたからね。制作については日々、刺激的で興奮します。
haienaさんが、割とメンバー全員の意見を聞きながら進めてゆくスタイルの監督で
いらっしゃるので、それも制作に皆がのめり込む理由なのかも。
自主制作映画を以前も作られていたそうですが、そのころからこういうやり方だったんですか?
ーhaiena
自主制作映画やってたんだぜ~」と 威張っては言えませんね。
映画作りの真似事をやっていたっていうのは本当なんですが、二、三年くらいのそれですし、
出来栄えもそりゃひどいもんでした。
『J&Hフィルムズ』においては皆の意見を聞いてから
演出やら工夫やらを考えるようにしていますが、
(一応は良い子ちゃんをやらせてもらっていますが)
当時は誰の言うことも聞かなかったんです、はい。
本も書けなかったので、 手順もへったくれもない。(台本、香盤表なしということ……)
カメラぶら下げて、無計画のまま、少しはまともな映画を撮りたいと思っている
友人達を引き連れて、(皆、嫌がってたよ……)ひたすら街をうろついてね。
壁を撮影したり、演者に奇声あげさせたり、カメラ振り回したり……う、うーん。
その場に在る人間の誰一人として何を撮っているのか、何を作ろうとしているのか解っていない。
僕も含めて。当然として、わけのわからねえ悲惨なダサい映画になりますが、
「商業映画じゃねえんだからこれでいいんだよお!」
「これは前衛映画。芸術。そうだろが、え?」
なんてことを本気でのたまっていたのでね……
裸の王様といいますか、裸の王様であり暴君であり、
みっともなくて恥ずかしい馬鹿だったという様子でしょうか。あの頃は……まあ、最悪だな。
こうして思い出してみると後悔と腐った恥の塊みたいなもんばかりを思います。なんてね……
ー夏色インコ
え、えーと。映画にしてもバンド活動にしても、たぶん5割〜8割は話を盛ってると推測しますが、 『あの頃のボク』に、何か言ってあげたいことばは ありますか?
ちょっと聞いてみたくなりました(笑)
ーhaiena
僕は病的な嘘つきですが、当時のハナシに大袈裟なところはありません。
ひどかった。ヤバかった。ダサかった。みっともなかった。すべて本当です、はい。
かつての手前自身に何か助言やれるのであれば、
「俺みたいに落ちぶれたいか?このイカレ野郎」
と言ってやりたい。
ー夏色インコ
ま、まあ、確実なことは haienaさんは楽器も歌も作曲もやられていた。
あげくの果てに映画監督のみならず、物語の創作、脚本もご自分で書かれるという、
あまりインコの周りには見当たらないタイプであることは 間違いないと思われ…
逆に苦手なもの教えて(笑)
さて、ご結婚されてしばらく映画制作はお休みされていたようですが、
今回復帰してみて
何か変わったことは?
ーhaiena
楽器は下手くそ。歌がどうのこうのというよりも音痴、凡庸で野暮な曲の他には作れない、
映画やらせりゃ独りよがり、書き物に関しては、低俗、露悪、そもそも下らねえの
三拍子が揃ってる。う、うん。編集長の周囲に見当たるような人物かどうかは知りませんが、
ろくでなしの典型っていうのかしらね……嗚呼……
ところで苦手なもの? 労働とキュウリかな。
そんなことはともかくとして、映画制作に復帰したという自覚はありません。
今作は通常の映画作りとは勝手が違いますので、
何もかも初めてのことだ、というような心持ちで進めています、はい。
ー夏色インコ
最後に。月並みな質問になりますが、
haienaさんにとって音楽と映像の魅力って何なのでしょうか。
ーhaiena
解んねえです。
music:haiena
haiena
職業 パートにてtrack maker(beat maker)
本業は墓荒らし見習い
出身 東京の東側
年齢 およそ青年というそれではない。
好物 焼きめし、豆腐
cast:Suzu(special guest)
&
director / camera:夏色インコ(chief editor of Honey Bird)
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