Uguistyle~9 人形の想い出



記憶にないベビーベッドの上で

きっと最初に持たされたのはタオルでできたぬいぐるみ。

それが、起き上がりこぼしに代わり

抱っこ人形になって、

例にもれず

リカちゃん人形にハマッていきました。


おもちゃ屋さんに行くと、

カラフルな長方形の箱にお行儀よく並んでるリカちゃんたち。

お誕生日とかクリスマスとか特別な日に少しずつ買ってもらって

家で持ってる洋服を着せ替える幸せ。


近所の子と家を行ったり来たりして

押し入れを家にして飽きもせず、ずーっとドラマをしてました。

今思えば台本なんてなくて

それなのにいろいろな事件や

普通の日常や急なお客さまをつくったり。

なんとクリエイティブな時間だったことでしょう。


彼氏を作りたかったけど

当時の「わたるくん」は家にいなくて、

仕方なく2歳下の弟の仮面ライダーを「仮氏」に。

ソフビの背丈がちょうどよかったのです。

カマキリみたいな顔をして今ひとつ素敵な彼ではなかったけど

そこは見ないことに。

たまに悪者が来てさらわれて、助けに来てくれる役目もしてもらいました。


ある日、何を思ったのか

母が一人で人形遊びをしている私の部屋に入ってきて

「仲間に入れて」と言うのです。

友だちと繰り広げるドラマは楽しくて仕方ないけれど

母親と二人でやるのは恥ずかしくていやでした。

でもいやとは言えず。そうかと思うと、

「仲間に入れて」と言った当の本人が微妙に照れているのです。

それはないでしょう~笑。

恥ずかしがっている母娘が最近買ってもらった「リカちゃんハウス」で

「お茶をいれてちょうだい」

「はい、どうぞ」

なんて空々しい会話を繰り広げるあの奇妙な時間。


ずっと大人になってから母に聞いたら

「自分の娘がのめり込んでいるリカちゃん遊びとやらを一度体験してみたくなって。」

「ちょっとした娘へのサービスのつもりだったのよ」

後にも先にもあの一回だけでしたが

40年以上たった今でもあの「母なりの愛」を鮮明に覚えています。


めぐりめぐって世代交代。

娘が人形遊びをするようになり、

本人が欲しがるよりも前にリカちゃん人形を買い与えました。

幸いにも娘も人形遊びを好きになってくれて

でも決して一緒には遊びませんでした。

恥ずかしいもんね。

当の本人は私と遊びたかったのか聞いたことはありませんが。


母になった私がハマったのはリカちゃん人形の洋服作り。

どんな小さな端切れでも、

ワンピースの衿やポケットやバックの飾りに使えるものだから、

娘が着れなくなった洋服までもとっておいてひたすら作りました。

トラ模様でファーのコートとか

レースのついたスカートとか。

娘が欲しいデザイン無視してひたすら自分が欲しいものばかり。


今でも大切にとってあります。

仮面ライダーが彼氏だったリカちゃんも。

トラのコートを着せられたリカちゃんも。


今でも「ドール」と聞くと素通りできないのは、

きっとそんなたくさんの時間を思い出すからなのでしょう。


はちみつバードな私たちは

そろそろ人生を歩む道の前と後ろの両方を見るようになって、

かわいいお人形にさえノスタルジックな気持ちにされるのです。


大人の人形遊び。

胸を張っていたしましょう。





text & photo : uguisu

uguisuがお届けする、はちみつバードの身近な生活スタイル。
懐かしい乙女心。Uguistyle。






はちみつバード

わたしたちの日常はふと、 ノスタルジックなファンタジアに彩られる。 わたしだけが選べる、わたしだけのかわいい日常。 ことばと。写真と。

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