すずまき*本と、紅茶と、あの頃と。#7



#7「娚の一生」×アッサムのスパイスチャイ


年上の男性に弱いんです。


いきなりなんの話…?
突然で申し訳ありません、わたしの好みの男性のタイプの話です。

もちろん年上というだけではなくて、年上で、インテリな人に弱いんです。
高学歴ということではなく、頭の良い人。
わたしの知らない分野のことををよく知っていて、いろいろ教えてくれて、この人すごいなぁ…と素直に尊敬できるような人に惹かれます。

さらに一緒にテレビを観ていて、同じところで笑えるような人だと嬉しいです。
笑いの感覚が同じだと、それだけで安心感というか、ホッとします。

あとどことなく陰がある、とか?
普段は明るくて人当たりも良いのに、ふとした瞬間、垣間見える陰とか過去とか闇とか…(闇はマズいか…)。
もちろんそれについては多くは語らない。
…キュンときます。

今までわたしが好きになった人、お付き合いをした人、少ないですが、今思えばみんなこの上記の条件が当てはまっていました。
はじめから条件に当てはまる人を探しているわけではないのですが、不思議とみんなそんなタイプの人でしたねぇ。

さらに理想を言うなら、シュッとしている人が好きかなぁ。
細身ですらっとしている人に憧れます。
でも背は自分より高ければいいなぁ、ってくらいなので、そこまで重要視はしてないかも…。

必須条件ではないですが、眼鏡が似合う人、スーツが似合う人ならもう無条件降伏です。
ついつい眼鏡スーツ男子に萌えてしまいます。
ネクタイとか、プレゼントしたいです。

…そんな人いないよなぁ…いるわけないよなぁ…と思っていたら、いたんです!!!

そう、この「娚の一生」という漫画の作品の中に!!!

「娚の一生」…「おとこのいっしょう」と読みます。
30半ばで恋愛や仕事にちょっと疲れていた主人公・つぐみと、つぐみの祖母にずっと片思いをしていたという50過ぎの大学教授・海江田の、恋愛から結婚に至るまでを描いた、西炯子先生の一風変わったラブストーリーです。

この、大学教授の海江田という人が、まさにわたしの理想の男性そのもの!!!
年上のシュッとしたインテリ眼鏡男子!(男子…ってのは違うか…おじさんだものね…。)

わたしがこの作品に出会ったのは、この作品が映画化される直前。
本が刊行されてからはちょっと時間が経っていました。
西炯子先生の作品は、学生時代に友達に借りて読んで、その独特な世界観に魅了されて自分でも買って読んでいました。
しばらく先生の作品は読んでいませんでしたが、映画化の話を聞いて(主演トヨエツだったし←芸能人も年上好き)、無性に読んでみたくて、調べたら4巻完結だったので、そのまま近所の本屋さんに走って買ってきました。

読んで早々に、海江田氏の大人な魅力にわたしの心は打ちのめされてしまいます。
何度本を投げて悶絶したことか。
もうあかん、好み過ぎてキュン死してしまうわ…。

一気に読み終えて、一息ついて、思いました。

…け、結婚しててよかった…。

当時わたしは二度目の結婚をしたばかりで、その1年前は婚活をしていました。
この作品、婚活中に(いやそれよりも以前でも)読んでなくて本当によかった…。
こんなん婚活中に読んでたら、海江田氏みたいな人探してしまって沼にはまってしまうわ…。

でもなにげに夫、海江田氏とはちょっと違うけど、さっき挙げたわたしのタイプにおおよそ当てはまっているかも?
今までお付き合いした人の中でも一番年上だし(つぐみと海江田氏ほどの年の差はありませんが…)。
美術とか音楽とか詳しいし、数字に強いところが尊敬に値するし。
背はわたしより少し高いけど、わたしがヒール履いちゃうと抜いてしまうので、あまり高いヒールの靴は履かなくなりました。
サラリーマンなので毎日スーツ姿を見れるのも、実は密かな楽しみだったりして。
眼鏡はしていませんが、年齢的にもうすぐするようになるんじゃないかな…老眼鏡(笑)

そんな惚気はさておき。

「娚の一生」には海江田氏のことだけでなく、わたしが心を持っていかれたというか、印象的な場面があります。
つぐみが海江田氏にお茶を淹れるシーンがよく出てくるのですが、ある時つぐみが気づくんです。
お茶を淹れることが「いつものこと」になっているということに。
詳しくは書きませんが、ひとりで生きていく、と思っていたつぐみが、いつのまにか海江田氏の為に…誰かの為にお茶を淹れることが「いつものこと」になっていた…。
いつのまにか、海江田氏がいることが当たり前になっていた…ひとりではなくなっていた。

わたしも毎日晩御飯のあと夫の為にお茶を淹れます。
もちろん夫の為だけではなく、自分の為でもありますが。
つぐみと違うのは、淹れるのは緑茶じゃなくてほぼほぼ紅茶(たまに緑茶の時もありますよ)なんですけどね。
それでも誰かの為にお茶を淹れる…これって「いつものこと」になってしまっているけど、よく考えたら当たり前のことではないんですよね。
つい6年前までは、この人にお茶を淹れてあげるなんて日常は、存在していなかった。

人生って、なにが起こるかわからない。
面白いものですね。

そんな海江田氏に、つぐみに、夫に、わたしが淹れてあげたいのはアッサムのスパイスチャイ。

高級な茶葉じゃなくてもいいんです。
アッサムのブレンドとか、出来るだけ細かい茶葉で、濃く出るような茶葉。
アッサムがいいと思うのは、アッサムがミルクに負けないコクを出せるというのもありますが、今回のこの話に関しては、アッサムがなんとなくわたしの理想の男性のようなイメージだから。
ひとつのことに真摯で、伝統とか定説を重んじる節はあるのに、新しいこと(フレーバーとかアレンジとか?)にも柔軟に対応できる、みたいな?
…あくまでわたしの勝手なイメージですが。

アッサムの茶葉を水からお鍋で沸かし、単体では濃くて飲めないくらいに抽出する。
その過程でカルダモンやシナモン、ナツメグ、ペッパー、クローブ、ジンジャーなどいろんなスパイスを一緒に煮込む。
今までの人生で経験した、苦いことや辛いこと、苦しいこと、全部一緒に煮込んでしまう。
そうして、そこに時間という名のミルクを注ぐとあら不思議、苦さも辛さも苦しさも全て緩和されて、美味しい飲み物・スパイスチャイになる。

ミルクを入れてからは沸騰させないように気をつけて。
チャイも大人の恋も、沸騰するくらい熱くなってしまうと台無しになるから。
沸騰一歩手前、くらいが大人の余裕、ってことで。

スパイスチャイ、そのまま飲んでももちろん美味しいし、スパイスのおかげで体がほかほか温まります。
そこにお好みではちみつやお砂糖を加えて甘くしてみたり、ブランデーやラムを落として大人の味にしてみたり。
時には子供っぽく無邪気にも、大人っぽくロマンティックにもアレンジできる…そこもまた、大人の恋って感じ???

寒い夜、ふたりでスパイスチャイを飲みながら、とりとめのない話をしたり、笑いあったり。
そんなたわいもない夫婦の時間を、これからも大切にしたいです。
当たり前だけど当たり前じゃない、「いつものこと」。
それを頭のどこかでちゃんとわかっているような、そんな夫婦でありたい。
つぐみと海江田氏のような。

「娚の一生」西炯子 著
小学館flowersフラワーコミックスα
(2009年〜2012年)




photo & text by すずまき

紅茶コーディネーター、紅茶学習指導員。
普段は某大学で図書館司書(パート)の仕事をしています。
学生の頃の夢は「良妻賢母な司書の小説家」…とりあえず
「妻」と「司書」にはなれました。
書くことが好きで、書き出すと止まらなくなります。




はちみつバード

わたしたちの日常はふと、 ノスタルジックなファンタジアに彩られる。 わたしだけが選べる、わたしだけのかわいい日常。 ことばと。写真と。

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