Uguistyle12~女の子にもどる散歩



ずっとむかし。

子どもの頃のスーパーの買い物は茶色い紙袋で

長いネギの頭が飛び出たまま

抱えて帰ってた。


雨の日は

紙袋が濡れないように帰るのが大変そうな

お母さんたちの横顔を思い出す。


「ひとつだけね」

そう言われて売場の棚の前をスキップして

小さなお菓子を選んだっけ。


カラフルなキャディ

グリコのおまけ

小袋のスナック

チョコレートバー


選べるのはひとつだけだったから

すごく大切だった。


ここ1年、

遠出をしなくなって。

いいえ

遠出しなくなったからこそ

覗くようになったお店がふたつあります。


ここは古い街。

住む人が高齢になって、

「趣味のものを捨てるのは忍びない」

そんな人の駆け込み寺のようなリサイクルショップと

週に2日しか開かない小さな自宅ショップ。


今の家に引っ越して何年もたつのに

いつかいつかと先伸ばして、

遠くのきらびやかなビルや

刺激的なイベントや

華やかな集まりに気をとられ

素通りしてた場所たち。


きっと、

こんな世の中にならなければ

行かずに終わってたかもしれない。


それらはお散歩コースの途中にあって

何度も足を運ぶうちに

「いらっしゃい」から

「こんにちは」に変わりました。


今日はひとつだけ。

そう心に決めて「こんにちは」とご挨拶。


行く度に新しいものがあって

ワクワクしながら

でも澄ました顔して

はやる気持ちをおさえ

ひとつずつ手に取る楽しさ。


刺繍好きだった人が

目がきかなくなったからと

全てを手放したらしい糸や木枠。


小さな木筒の針入れ。


角川文庫のナツイチ、

ハチのストラップ。


ミニミニ書道セット。


試供品のミニ香水瓶。


可愛いピンクのつまみ細工。


小さい手鏡。


renomaのハンカチ。


アルミの小箱に入ったカラフル待ち針。


ベークライトのブローチ。


切子のグラス。


繊細な竹細工の箸おき。


カードキャプターさくらのミニチュア。


セーラームーンの杖。


金の表紙のリングノート。


亜土ちゃんの鉛筆。


みんな50円とか100円とか

手書きのシールが貼られてて。


お菓子の棚の前をスキップしたのは遠い昔で、

今は好きなように買えるけど。

女の子の気持ちに戻って

100円玉を握りしめて出かけるお散歩。


「今日はひとつだけ」


そう思って選ぶ棚は

あの日のお菓子の棚のように

キラキラした宝石箱のよう。


選ぶのはひとつだけだから

慎重に注意深く。

そうして

ひとつに決めた可愛いものを手にする帰り道は

あの頃のワクワクと変わらないのです。


「ひとつだけね。」

あの日の母の言葉は

今は自分で呟く言葉・・・・・。




はちみつバードな私たちは

たくさんの道を前にして

たくさん間違ったからこそ今があるのを知っている。


いくらでも手にできる中から

少女のようなピュアな心で

ほんとうに欲しいものだけを

選ぶことができる。



また行こう、あのお店へ。

100円玉握りしめて。





text & photo by uguisu 

 uguisuがお届けする、はちみつバードの身近な生活スタイル。 
懐かしい乙女心。Uguistyle。





はちみつバード

わたしたちの日常はふと、 ノスタルジックなファンタジアに彩られる。 わたしだけが選べる、わたしだけのかわいい日常。 ことばと。写真と。

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