突然の上に、意味の分からないことを書いていただろ?
きっと、ふゆ子は黙殺するだろうと思っていたんだ。
でもね、そうされても仕方ないと思っていた。。
何て言っていいのか、
俺もどうしていいかよく分からないんだ。
だって20年振りだぜ。
こうやってコンタクトを取るのは。
20年の空白の時間を埋めるべきなのか。
それとも空白のままにしておくのか、俺だって迷うよ。個人的にはこの20年、
何かに憑りつかれたように
穴の開いたハートを埋め尽くそうとしていた。
ふゆ子はどうしていたんだろう。
もしかしたら、虚無の中で
さまよっていたんじゃないかと心配していたんだ。
でもね…、
心配なんだけど、声をかけるのが怖かった。
俺自身もあんなことがあってから暫くはカラッポになっていたからね。
ふゆ子の小さな手を握って、
通学していた頃がよかった。おまえは6歳にして町一番の美人だったからね。
他の子とは全く違う雰囲気だった。
そんな子の手を引いているのを、俺は誇らしく思っていた。
きっと今は絶世の美女になっているんじゃないだろうか。
どうなんだろう。また手紙を書くよ、美人さん。
[ふゆ子からツトムへ]
ツトムくん、
こんにちは。
心配する程でもなく
たった一通のあたたかい手紙が開けた隙間から塞いでしまいたかった空白に風が通り抜けたね。
こちらオレンジ色に染まったハロウィンの喧騒もいつの間にか過ぎ去り…
季節外れの林檎飴のことなど思っているうちに少しずつではあるけれどツトムくんについての記憶も甦ってきたよ。なんとも頼りなく。
その中でどうしても聞けなかったことをひとつ、
20年の月日を「黙殺」しなかった代わりに今なら聞いてもいいかなっ、て。
ちょうど私たちが数年間一緒に手を繋いで通学していた後半の頃、ツトムくん…
ある日突然吃りだしたよね。
その日を境に自分の見ることのできる完全な世界はないということが漠然と解った気がする。
ツトムくんが実際に吃音ながらに喋っていたことと
本当に伝えたかったことの
間に生まれた誤差は今でも
わたしの悲劇です。
唖然とするくらい、快活だったツトムくんを一時、
何がそうさせていたのか。
差し支えなければ教えて欲しい。
それから…その後のご家族の
ことも。
(深くて赤い秋の日に)
ふゆ子
*この作品はフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ありません。
text by reika & tsutomu
玲薫
精神的にファンタジー☆
眠れない夜には詩を編んだり映画を観たり..
好きな作品はビクトル・エリセのミツバチのささやき。。
藤本ツトム
32歳 血液型A型。 趣味 レイモンド・チャンドラーを読むこと。
劣悪な高校を卒業後、 凡庸な大学に入学。そして中退。
その後、都市を漂流する。
photo & edit by kona
kona
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age ないしょ
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hobby 偶然の出逢い
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