牛歩のごとく
最近、苦手だった場面づくりに挑戦しています。
わたしの撮影スタイルのほとんどは
偶然出会った素敵な一瞬を逃さずキャッチするという
スナップショットが中心です。
ワクワクするような一瞬に出会うために
色々な場所に出向き、魅力的な人たちと出かけては
キラキラした一瞬を切り取ることが楽しみであり、ライフワークにもなっています。
初個展の際にお披露目した作品のほとんどは
そんなスナップショットの集大成と言えるものでした。
あれから一年。
半年は燃え尽き症候群で抜け殻になり。
年が明けて少し気力が戻ったところで
そろそろ何か撮影してみようと重い腰をあげました。
ですが、あまりに久しぶりすぎて何をどう撮って良いのか迷っている間に
気付けば新型ウィルスの自粛が重なり
外出さえ難しく撮影どころではなくなってしまいました。
そんな時、本屋でパラパラと立ち読みをしていた雑誌に
広告写真のためにたった一人で絵作りをしているデザイナーの方のインタビュー記事が載っていました。
誰も思いつかないような斬新なデザインでありながら
CGを使わずひたすらアナログに撮影していく。
時間も手間も掛かるけれど
時代の数歩先を行くデザイン。
愚直なまでの手作業での絵作り。
そこに芸術的な感性としなやかさがあり
最新の機材などを使わなくてもアイデアでいくらでも作品って作れるんだと
目からウロコが落ちるようなそんな衝撃が走りました。
たまたま手に取った雑誌だったにもかかわらず
気付けばすっかりその作品に魅了され
毎晩その雑誌を眺めてはあれやこれや妄想する日々となりました。
***
今回の写真は、そうだやろう!と思い立ってから初めて撮った一枚です。
haiena監督の「LUGINSKY」の影響も重なり
とにかくクールな大人の童話のような世界観を作りたいと
仕事中も必死になって場面設定を考えました。
モデルを男性に決めた時点で
自分の中での難易度が急速に膨れ上がり一瞬不安に駆られましたが
「やらない後悔よりやる後悔」と思い直して踏ん張りました。
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根気も発想もなく苦手だった場面を作る作業。
衣装の手配から場所移動
モデルへの指示出しも含めて
今までだったら人任せ、行き当たりばったりだったけれど
徹底して作り上げれば
作品として形になるんだという小さな自信につながりました。
それ以来、不思議なことに
次に撮影するならこんな風に撮ろうその時には
あの人に声を掛けてみよう
ダメでもいいから動いてみよう
そんな活力が湧いてきました。
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まだ活動は始めたばかり。
精力的に動いてもまだ納得のいく一枚は撮れていません。
それでも苦手を克服しながら地道に進むしかありません。
千里の道も一歩から。雨垂れ石を穿つ。
ゆっくりですが少しづつ進化し続けていこう
そんな風に思っています。
スイ
text & photo by sui
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