Uguistyle~10 雨降って地固まる



雨が降れば傘をさす。


それはなぜ?

濡れたくないから?

「雨が降れば傘をさすものだ」と教えられたから?


少しも疑問に思ったことがなくて

出会ったばかりの彼に「雨だから傘がいるね」と話したら


「なぜ傘をさすの?」と聞かれました。

「濡れたっていいじゃない。気持ちがいいよ」



好きにならないわけがありません。



それでも私は傘をさしたけれど彼はよく濡れてました。

そして言うのです「気持ちのいい雨だね」

雨が屋根をうつ音がし始めるとにっこり笑って「いい音だね」



突然降ってきた雨に濡れながらさすがに大雨で

小走りで帰ってきたらしい彼の

玄関に入ってくるその顔が何とも穏やかで



大雨で濡れるのがいやだと言うと

「じゃあゆっくりどこかで雨宿りをしていこう」

雨宿りした小さな喫茶店で珈琲を味わう楽しみを知りました。


そんなことを繰り返すうち、

なんて自分は小さいことに右往左往しているのだろうと

肩肘張ってることがバカらしくなりました。

傘がなくたって大したことじゃないと思えるようになりました。


それでも雨が降れば傘をさすのは変わらなかったけれど。



慣れとは怖いものでロマンチックな時間を教えてくれた彼と

「一緒に協力して」家庭を築き

「役割分担をして」仕事と子育てをこなしていくうちに

雨がなんだ

傘がなんだ

喫茶店で珈琲なんて飲んでられるか

お互いが目の前のことで一杯で、

ここでは話せない色々なことがあって

真剣にこの人とはもう暮らせない

そう思うことが出てきます。


どしゃ降りです。


大雨を避けたり

大きな傘をさしたり

それこそやむまで雨宿りをすればよかったのにね。


それでも日々の生活に流されて

それぞれの傘を持ち

別々に濡れたり

お互いに傘を差し出す優しさは忘れてしまって

一人で雨宿りしたりするうちに

雨をやり過ごす術を身につけていったのでしょう。



惰性なのか

妥協なのか

諦めなのか

達観なのか



まさに

雨降って地固まる。



今もたまに玄関先で

濡れて帰ってきた彼の微笑みを見ると

あの知り合ったばかりの頃を思い出します。



今なら彼に傘を差し出せるし

一緒に濡れて帰れるし

喫茶店で珈琲を楽しめる。



相変わらず彼は雨に濡れるのが嫌いじゃなくて

私は置き傘を忘れないでいるけれど。



雨が降れば傘をさす?



それは

自分で好きに決めればいいだけのこと。




はちみつバードな私たちは

雨が降っても

さす傘や差し出すタイミングを

自由に選ぶことができる。



なぜなら、

たくさん悩んでたくさん失敗してきたその道が

私たちを支えてくれているから。





text & photo : uguisu

uguisuがお届けする、はちみつバードの身近な生活スタイル。
懐かしい乙女心。Uguistyle。









はちみつバード

わたしたちの日常はふと、 ノスタルジックなファンタジアに彩られる。 わたしだけが選べる、わたしだけのかわいい日常。 ことばと。写真と。

2コメント

  • 1000 / 1000

  • uguisu

    2019.11.23 05:15

    @+you共感してもらえて…… すごくうれしいです。 失敗は歳重ねてないとできないですから……ね♪ 勲章です。 コメントくださってありがとう
  • +you

    2019.11.23 04:51

    素敵なお話 すれ違っていく様や 最後の沢山悩んで失敗したからのくだりに 思わずホロっとしました