格好つかない庭
築40年を超える家に住んでいます。
中古で購入したのが30代前半。
その時すでに20年を過ぎていましたから
あと数年で半世紀を迎えることになります。
築年数だけ聞くと
相当な古家と思われるでしょうが
古びた雰囲気のない外観が素敵で
お気に入りの我が家です。
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日当たりと風通しもよく
庭の樹木がよく育ちます。
前の住人であるご夫婦が丁寧に庭を手入れをしてくれていたおかげで
ズボラなわたしたち夫婦が何もせずとも
四季の花を愉しませてもらっています。
春の満開の桜を皮切りに
さくらんぼがなる頃には外壁沿いのバラが咲き乱れ
初夏が訪れれば紫陽花が繁茂し
夏はクレマチス、サルスベリと続きます。
初秋の彼岸花の群生は圧巻です。
この時期は庭のそこかしこが紅く染まり
アゲハ蝶がひらひら舞い飛ぶ姿を見ては心が踊ります。
冬が訪れても花の彩りは止まらず
山茶花の花びらが散る頃には紅白の梅が可愛らしく咲き
春の訪れを感じさせてくれます。
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実は庭の手入れは大の苦手です。
引越してから10年ほどは原型を留めていましたが
いつの間にか雑草が生えても見て見ぬ振り
枝が伸びても年一回伐採するだけ
ここ数年は野生の自然へと変貌しています。
それでも元気に花を咲かせてくれていた庭ですが。
昨年、個展の前日。
それまで元気だと思っていたバラが根ごと倒れてしまいました。
個展の準備で心身共に疲れ切っていたわたしと同じくして
まるで力尽きたかのように倒れこむバラの蔓を見ていたら
20年も一緒に暮らすと人も植物も一心同体になるんだなと
悲しいよりも不思議とそんなことが頭をよぎりました。
バラの根は思ったよりも太くしっかりしており
どうしても引き抜くことができなかったので
そのまま放置して朽ちるのを待つことにしました。
あれから数ヶ月。
梅がポツリポツリと咲き始める頃
駐車場脇に寄せてあったバラの根元付近から
しれっと新芽が出てきました。
その後はグングン枝葉を伸ばし
まるで何事もなかったかのように
ゴールデンウィークの自粛期間中
満開のバラを咲かせていました。
根元のあちこちから伸びた枝は
お世辞にも綺麗とはいえない不恰好さですが
それが逆に我が家の庭らしいなと
時折眺めては微笑ましく思っています。
スイ
text & photo by sui
新連載「Sui's standards」始まりました
お待たせいたしました。
1年近くお休みしていた人気連載「sui 情景のある仕草」が
リニューアルして帰って来ました。
家族、仕事、趣味や人間関係
日常を取り巻く大切なものたちから得た
彼女なりの価値観とは。
ひとりの女性として、スイさんが見つめる風景を
瑞々しいフォト・エッセイでお届けします。
ー夏色インコ
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