王道青春ラブコメ映画と僕の放課後 【後編】




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当時を顧みると(細かいところはおよそ忘れちまいましたが)

兎にも角にも着てるもんがひどかった。

ダサいならまだいい。ダサいのではなくて異様……

70年代のアメリカンニューシネマやヒッピー映画を観すぎたからか、

(そこは青春映画じゃないのかよ……)

 銀色と紫色の気色悪いストライプのフレアパンツを穿いたり、バカでかい襟のシャツを着たり、

なんていうのかな、 70年代のブ ルックリンのポン引きみたいな恰好してたわけですよ……

たまにウエスタンハット被ったり、

ジョンレノン風のまん丸い鏡面サングラスかけたりね。(滅茶苦茶だぜ……)

『さらば青春の光』を観て

モッズの真似をしたこともあったなあ。あれもひどかったな。滑稽の他なかった。

流行に服さず、映画世界の憧れを衣類を以て主張する、

というような書き方にすると、

あら、そういうのもお洒落じゃないのと思われるやもしれないが(思わねえか……)

けしてそんなもんじゃなかった。あの頃、僕はキモかった。




当時は B系っていうのかな、

(股下45センチくらいの腰パンのすげえのがいたよ)

(レゲエみたい な奴もいました)

よく解んねえけど、こういうのが流行っていたので、

そんな時代においてですね、僕の姿容が如何に奇異だったか……


ところでこちらが籍を置いていた学校は、東京山の手のお坊っちゃん男子校でしてね。

一部の不良少年グループがカッコイイだとかなんだとかで知られていました。

彼らの名声(?)のおかげなのか、 冴えない生徒連中も(僕を含めた)

学校の名前だけで週三で女子高の皆さんと合コンしてもらえた。

そんで 上記のような恰好をしていた僕がどうなったのか。 冷遇。(嘲笑か……)

週三で「あいつはなんなんだ」と謗られることになります。

それでも僕は 「変わる必要はない。こんな俺を好きなってくれるギャルはいる」

このどうしようもない思い込みから抜け出せず、嗤われ続けるわけなんですね……嗚呼。


私服で出会うばかりではないので(学生服姿の時だってあるからね)

こちらのどこが気に入ったのか皆目見当つかないが、

あんたと付き合ってやってもいいわよという相手がたまには現れる。

だけども、すぐにフラられちまう。

「他に好きな人が出来た」「好きじゃなくなった」

という別れ文句ならばまだマシなのですが、

どいつもこいつも 「ついていけないところがある」これを言って去っていく。


よくよく思い出してみると、

二人で 過ごしている間、まったく僕は話をしなかった。

面白い話なんてもんはない。だったら話さなくてもいいだろうがという了見です(ひどい……)

なので 相手がお喋りしなけりゃならなくなるのですが、それをまったく聞いてない。

興味のない話を聞いてやっても仕方ねえやという考えです(ひどすぎるぜ……)

話をしない、話を聞かない、おまけにダサい……こんな奴と一緒に居られるわけねえわな!

それでも僕は「俺は俺だ。こんな俺でも惚れてくれる奴はいるんじゃないの」

ここから抜け出せなかったのよ……sick


「俺は俺だぜ」は構いませんが、

女のコ達に嗤われる、彼女が出来てもすぐフラれる、

強がっていたって思春期です。繊細なお年頃ですよ。

次第に滅入ってくる。弱ってくる。

「なんてこった。俺は女とまともな関係になれねえ」と思い詰めるようになります。くっだらねえ!


丁度、そんな風に思い詰めていた頃、

『レイチェル・ペーパー』のビデオを観た。

レンタルビデオ屋の右脇の棚の下の方にあったっけ……


主人公チャールズ君なんですが、

ガールハントにおいて、徹底して作為的に自己やら主張やらを放擲します。

着るもんだとか、音楽だとか、食い物だとか、

あらゆる分野(?)に好き嫌いがあるでしょ、誰だって。

彼は女のコと付き合うためだったら、それら一切を放 り出しちまうんですね。


ロックが好きでワイルドな女のコを狙うのならば、

彼女が好きそうな恰好を。(革ジャン?)

部屋をわざと荒らす。レコードをそこら辺に投げておく。

ポスターも張り替える。


知的で秀才というような女のコが相手ならば、

着るもんはコンサバに。

部屋に哲学書だとか詩集だとか公民権運動の本だとかを

何気なく置いておく。

ポスターは張り替える。

会話も計算ずく……相手によって話題を選びます。




女ん人にとっては、誠実ではないという風になっちまうやもしれないが、

当時の僕は、

彼の小細工は努力なんだと、ここまでやらなきゃ駄目なん だと、

「俺は俺だ」は通用しないのだと、

是非はともかく啓蒙されちまったんですね、はい。


だからといって

早速、プレイボーイに変身というわけにゃいきませんが、(そりゃそうだ)

人並みの恰好をして、相手が退屈しない程度の話をする、相手の話を聞くように努める、

これくらいといいますか、普段の青年のふりくらいはやれるようになりましたよ。


『レイチェルペーパー』に話を戻しますが

チャールズは遂に“夢の女性”レイチェルと出会います。

あらゆる手を尽くし、すったもんだの末、彼女と結ばれるが…… まあ、そんな映画です。

この作品はDVD化されなかったので観ること叶いません。

だから、ネタばれどころか丸々書いてやろうというつもりだったんですが……


先日のこと、 スカパーの映画専門チャンネル『ザ・シネマ』の

「シネマ解放区黒幕」さんにですね。

ツイッターにてダメもとでお願いしたところ、

(『メイド・イン・ヘブン』と『レイチェル・ペーパー』の二作品の放送をお願いしました)

リクエスト承りましたとお返事して頂いちゃってですね……うおおお!

とはいえ、年単位で時間が掛かるとのことで

いつ放送されるのか解らないのですが、そんなことはどうでも構わない。

僕、大喜び……そりゃもうね……大喜びするだろうがよ……

なので『レイチェル・ペーパー』について、これ以上は書かないことにした。

放送されるのかどうかも確かではないのだけれど、

それでもね、ええ、ただただ待つばかりであります。



ところで『レイチェルペーパー』を観た数か月後だったかしら。

こちらも“夢の女性”Mと出会います。(出会ったというかナンパというか……)

もとより明るい髪の色をした、ソフィー・マルソーに似た混血の彼女、

自身の奇人性を抑えなければならない不適応者的高校生の僕、

二人のお付き合いは次第に無謀な調子へ……

「世界には俺とお前だけ」みたいな感じになっちゃって、

互いに自滅的な方へと向かっちゃったりなんだり、畢竟はしっちゃかめっちゃかだ……

彼女の言葉でこちらがよく憶えているのは

「約束はしない。守れないから」

約束はしない、守れないからか……シブいぜ…… 

なんてね。こんな思い出話、他所様からすれば何ひとつ面白味なんてないもんだ。


こうしてだらなしなく書いてみて、僕という人間が如何に映画に影響されてきたか、

それを思い知るばかりです。

ひどく影響されちまって、 馬鹿な考えに憑かれたり、恥晒したりもしましたが、

それでも多感な頃に映画をたくさん観られて良かったなあ、

これがね、本当にね、そうだなと、ええ。


王道定番青春ラブコメ映画は不調どころか

終わってしまったのかというような話を書いてきましたが、

先日観た

『THE DUFF/ダメ・ガールが最高の彼女になる方法』2015年?

この映画がね、今時でありながら、例の雛形をしっかり引き継いだそれというか……

嗚呼、不貞腐れた中年になっても、

僕はこういうのが好きなんだなあってね……haha


おしまい。







text by haiena

haiena
職業 パートにてtrack maker(beat maker)     
          本業は墓荒らし見習い
出身 東京の東側
年齢 およそ青年というそれではない。
好物 焼きめし、豆腐




illustration by Sally


Sally
とりあえず、日々絵を描いています
たまに音楽も演ります それからたまに、ちょっとしたお話も創ります
それから、それから…まァそんな感じです







 

はちみつバード

わたしたちの日常はふと、 ノスタルジックなファンタジアに彩られる。 わたしだけが選べる、わたしだけのかわいい日常。 ことばと。写真と。

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